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きいろいしっぽ6

『社さん』に私の存在を知られてから数日。
敦賀さんの様子がおかしい。

いや、それまでと同じような生活をおくることはできている。
なんというか・・・・・・気づくとじっとこちらを見ていたり、ともするとぼーっと何か考え込んでいたり。
明らかに様子がおかしい。
もしかして?
もしかして・・・・・・?
あることが脳裏によぎって、いつしか憶えた胸のしめつけがこのごろひどくなってることに気づいた。

駄目だ。
変なふうに考えちゃだめ。
私はもう普通の人間じゃないのよ。
それなら祝福してあげるべきだわ。

頭にぽっとでてきた記憶は、香水の匂いだった。
敦賀さんが帰宅したとき、クリーニングに出すものがないか聞くと、じゃぁこれもと言って着ていたジャケットを渡された。
そのとき。
そのとき。
鼻先をかすめた匂いは家にあるものとは違って、瞬時に女性用の香水かもと思ってしまったのだ。

もしかしたら、敦賀さんには想い人がいるのかもしれない。
それなのに私が長居してその彼女とうまくいってないのかもしれない。
まぁそもそも敦賀さんが願い事を言ってくれないからだけど・・・・・・。

それならば、願い事はその人とうまくいくようにしてあげればいい。
彼女に会う機会を多くするっていうことだってできる。
もしかして仕事が大変で会えないのかもしれないし。

そうだ。
そうしよう。
そうするのが一番いい。
そうすれば、早くこの時間から次の時間に飛べる。
この胸の痛みも消える。

敦賀さんと会えなくなるのは少し寂しく感じたけど、私は頭を振ってそんなあまったれな感情は消した。










「敦賀さん、今日は大事な話があるんです。」



敦賀さんの帰宅を待って、玄関でそう告げた。
疲れてるかもしれないと思ったけど、朝になれば話す時間はないし、先に延ばすほど言えなくなっていく自分がいるのがわかったから。

おかえりなさいも言わずにそう言った私に少し驚いた顔をして敦賀さんは笑った。



「何? また炊飯器のスイッチの入れ忘れかな。」



スイッチはちゃんと入れましたし、もうごはんも炊けてます、とむすっとしながら言うとクスクスとからかうように笑った敦賀さんは着替えるねと言って行ってしまった。
その間に済ませてしまおうと食事の準備をする。
もう日付が変わろうとしているし、軽く付き合いで夕食はつまんだと連絡が入っていたからかなり軽めであるけれど。

スープと少しのサラダをテーブルに置いて待っていると、敦賀さんが着替えを終えて椅子に座った。



「最上さんはもう食べたの?」



「はい。って敦賀さんが『最上さんが食べておいてくれないと明日は何も食べない』なんて言って脅すから。」



そうだったね、と笑われて私はすねたようにうつむいた。
カチャカチャとスープを口にする敦賀さんを耳で観察しながら、さきほど決意したことをどう話そうかと考える。



「スープおいしい。ああ大事な話だっけ? 何かな?」



と、先手を打たれた。
もう、どうしてこの人は私の悩んでることを先回りするのか。
結局、早くいってしまえと言われてるような圧迫感を受け、ぐっと膝に置いた手を握ると顔をあげて敦賀さんを見た。










「敦賀さん、私は敦賀さんの幸せを願ってます。だから、どんなことでもいいです、願い事を言ってください。」



敦賀さんの手が止まった。



「敦賀さんはもしかして好きな女性がいらっしゃるんじゃないですか? それなら、願ってくれるなら、私がその方と敦賀さんの仲を上手くいくように手助けます。彼女に敦賀さんのことを好きにさせるのが嫌なら、例えば会う機会を増やすことだって可能です。そういう小さなことでも、」



「最上さん」



提案するのに夢中になっていた私の頬に冷たい指が触れた。
外はもうこんなに寒くなっているのだろうか。
このごろ外に出ていないから、わからないな。



「君に言おうか、迷ってたんだ。」



ああ、やっぱり。
やっぱり敦賀さんは誰かを想ってるんだ。



「そうだね。でも、君には叶えられないかもしれない。それでも、・・・・・・それでも聞きたい?」



数秒黙って、こくりと私は頷いた。
やっと解放されるのだ。
この痛みから。
早くしなければ、私はこの人から離れるとき悲しみでどうなってしまうかわからない。



「言って、ください。」



声が震えた。



「・・・・・・その前にどうして今言おうと思ったか、話してもいい?」



「? それは、・・・・・・私が聞いたから。」



「いや、今日は俺も話そうと思ってたから。びっくりしたよ。玄関入って、開口一番そっちから大事な話があるっていうもんだから。心の中でも読まれたのかと思った。でも、話そうってしっかり思ったのは、何秒か前。」



どうして?



「君が、そんな表情するから。」



表情?

私はとっさに手のひらで頬をごしごしさすってしまった。
そして敦賀さんの言葉の意味がよくわからずに、首をかしげる。



「気づいてないの? ・・・・・・そっか、無意識か。」



そう言って敦賀さんは私の手を取ってぎゅっと握った。
指先よりはるかに暖かかった。
いや、暖かくなった?

手を握られたせいで、心臓がドクドクいっているのがわかる。
敦賀さんに聞こえないか心配になった。
耳が遠くなる。
時間がゆっくりすぎて、敦賀さんの口が動くのをただただ見つめていた。










「俺の願い事、最上さんが好きです。ずっと一緒にいてほしい。」










ずっと一緒にいて欲しい?
私と?










「・・・・・・できないなら、君の願い事を俺の願いとして叶えて。君の幸せが俺の一番だから。」










「わ、たしの、願い事?」










それは



つづく




うはー。いくつかある終わり方のうちこれを取ってしまうなんて! ・・・・・・ま、しょうがない。(←おいおい)


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