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kanon - 香音 - 4

kanon - 香音 - についてを一度読んでから読み始めてください。




kanon - 香音 - 4










ガタガタガタ



ガタガタガタ



窓が揺れる
神父さまはまだ帰ってこない





…桜が踊る
香りが舞う
香りの音が聞こえる―――――



窓の外を見ると雨のように桜が散っていた



―――――すごい花びら
桜が… 泣いてるみたい



そのとき私は、神父さまの言葉を思い出した。
さっき出掛けるときに言った言葉。
『ここに アレは入ってこれません』
そう言った。



神父さまのおっしゃった
あれ…って

あれって…―――――





















夜見と唐木は忍者のように口元を布で隠し、教会の前まで来ていた。

「ここがそうなの?
日本じゃないみたい…ここだけ別空間だね」

夜見はきょろきょろとせわしなく教会や近くの木々に目をやり、前にいる唐木に話し掛ける。
唐木は気づいていた。
上から見下ろす存在に。

「ほんとにうざいねえ 彼は…」

その言葉に夜見も教会のてっぺんを見上げる。
月が十字架のシルエットを装飾して、悠然とそこに存在していた。

「…ああ
あれがマヌケなナイトかあ」

シルエットは十字架だけじゃなかった、ばさりと音を立てるように首に巻いてある布がたゆたう黒い影。
尚は先制とばかりに教会の十字架から素早く降り、刀を振った。


ヒュッ!


カキン

唐木は上から来た邪魔者の刀に上手く持っていた刀で応戦する。
尚がはずみで後ろに下がった瞬間素早く腰にあった小刀を抜き、まっすぐに投げた。
投げた小刀は尚の頬をかすり、後ろの木にすとと刺さる。


「ありがと 唐木」


後ろでは夜見が木に刺さった小刀を手にしたようだったが、ぐっと頬を伝う血を腕で拭い、尚は次の攻撃に応じるため刀を持ち直した。
唐木の方が飛ぶ力や素早さがあるため、夜見に注意を向けるのは危険だった。


「まだまだだよ」


しゅっと刀を振り上げて飛び上がった唐木に、腰を据えて尚は振り落とされた刀に沿って自分の刀を滑らせた。
しゃりしゃりという音と、どっと鈍い音が夜の静かな空間に同時に響いた。
後ろから攻撃したのは夜見。
うしろの腰の右から血が吹き出したことで、膝が折れた。

「ちぇ ちょっと避けやがった  ざんねーん」



「フフ 中に入るぞ 夜見
キョーコは教会だ」



「う…待…」



そのとき、大きく風が吹いた。
ざわざわと桜が音を立てている。
暗い闇を照らすように桜の薄桃色の光があたりを明るくしていく。


「う…桜…?」


「…誰だ!」


桜の光に包まれて、誰かが立って3人を見ていた。



「教会には入れませんよ
私が…結界をはりましたから

あの子が扉を開けない限り…
あなたたち“シ”は入れません」



神父…!?



ざぁっっとひときわ大きく風が舞い上がり花びらを渦に乗せて散らす。
唐木と夜見にだけ攻撃しているようだった。

「う…なんだ? この花びら

夜見っここは引くぞ」

その言葉に、尚がそうはさせないと刀を土にさして立ち上がった。

「だめだ! 今回は逃がさない!」

ザシュと血の吹き出る音が大きく桜の花びらの中で響き、夜見は唐木の姿を一瞬見たが、素早く闇に溶けて姿を消した。





















     キョーコ…










―――――誰?
また私を呼んだ?










     キョーコ―――――
     開けてくれ










―――――誰の声?



震える手のひらを窓の取手にゆっくり近づける。
窓の近くは冬のように冷気をまとっていて、手がさらに震えている気がする。



“シ”はオニ
“シ”はカミ

鮮赤の池に美しい姫君
“シ”を従え操る
―――――夕姫



     キョーコ―――――



[霞の池の夕姫は 吸血姫―――――]



     キョーコ―――――



[池に帰れ そして夕姫の眠りを覚ませ]



ドクドクと血が沸騰するかのように、全てのパーツが頭の中に降ってくる。
この声に答えなきゃいけない。
私を呼んでいる。

震える手のひらがしっかりと窓のノブを掴んで、一気に手前に引いた。










「キョーコ…俺…がわかるか?」



血だらけだ。
この人…桜と一緒に入ってきたこの人。
大丈夫なのかな。



「どうした?
どうして何もしゃべらない?」



心配するように彼の手は私の頬をさする。
それから、それから、ゆっくりと彼が近づいてきて首を何かがかすめた。

また、熱い。
血が、首が沸騰する。
この感じ、ずっと前にも…

そう、いつも…
いつのまにか そこにいるの
その手はいつも…さりげなく現れて包んでくれる



「…キョーコ?」



震える手は、彼の服を掴んだ。
なぜか涙も出た。



「…尚」



「やっと…思い出したか ばーか」



あの大きな手は私を力いっぱい抱きしめて、窓の外の桜から私を見えなくした。





















とうとう…この日が来てしまいました
社さん、あなたが俺のために残してくれたこの思い…
今宵 終わりの時を迎えそうです

俺は…幸せでした

夕姫の眠りをよいことに
鮮赤の池から逃げ出し、傷ついた…あの日より
俺はずっとあなたに感謝しています…

村人に見つかった私は、その攻撃から逃げて
この教会にやってきた。
そんな血だらけの俺に優しく声をかけてくれたことを今も鮮明に思い出せます。

あなたは優しかった
俺は両目をつぶされ…足は折られていた

今の村人と違わず
人間は異なる属を恐れ…攻撃し
排除しようとする

俺は心臓に刃を受け…
消えゆく寸前で



『俺の体をあげるよ。
実は病気でね…もう長くはないらしいから…
だからこの肉体(うつわ)をお前にあげるよ』

『でも…“シ”ではなく神父(おれ)として生きてくれよ?
ここにいれば神が…お前を守ってくれるからさ

ここは人里離れてるし、おとなしくしてれば
今のこの騒ぎもいずれ収まる』



できるだけ人間に関わらないようにしてきましたよ
不思議なことに
俺は血に飢えることなく今までいる

このからだか…社さんの祈りのおかげなのか
わからないけれど

でも



「でも、桜が……とうとう君を呼んでしまったね」



朝の日課のように俺は祈る姿のまま、後ろにいるはずの少女に話し掛けた。
きっと彼女はここにきたときと同じようにあの着物を着てる。



「いいんだキョーコ…
池を抜け出した時からいつかこの日が来ることを覚悟してたから

今となってはあの池の桜が…懐かしいよ

やっと…帰れるんだ」



「神父さま…ありがとう」



小さな手が俺の背中に触れて、きゅっと力を入れた。
それは小さく小さく震えていた。










「キョーコっっ!」

ざわっと桜が呼んだ音がした瞬間、俺は背中の少女をかばった。
キョーコがきた方向を見据えるようにして背中に少女をやる。

それと同時か、…少しあと。
胸に飛んできたのは小刀だった。
ぐらりと体が痛みで傾き、横に立っていたキョーコが大きく叫んでいる。

「神父さまっっっ!」

石畳の床を素早く蹴ってこちらへ向かってきていたのは…さきほどの“シ”の一人だった。

「キョーコ! 唐木の仇だ!!」










水よ…桜に寄り添い舞えよ

夜見を包んで閉じ込めて



     「  桜翔舞!  」










―――――やっと…帰れるんだ

―――――神父さま ありがとう










ざぁと水のような空気と桜が一緒になって二人を砂のようにして池へ帰した。
きっとゆっくり眠れる。





















…桜が踊る

香りが舞う



「桜…きれいだな」

「ふふふ……」

「なんだよ…」

「ううん なんでもない」



香りの音が…聞こえる―――――



終わり




神父・社さんの中身は敦賀さんでした。
気づいたかな?



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