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きいろいしっぽ4

さてと、洗いものも終わったし、片付けも・・・もともと綺麗だから楽に終わったし、これから何しようかな。
まさかお客さんの願い事が思いつかないからって長くこっちの世界にいたことないし。
ま、もとは私もこっちの人間なんだけど。
どうしようかしら・・・。

キッチンで仁王立ちしていた私は、うーんと唸りながらリビングへ移動することにする。

まぁまずはお客さんの情報集めね。
あの様子じゃすぐ簡単に願い事をきいて、はいさようならということにはならないと思うし。
調べておいた方がのちのち役に立つでしょ。

「うーん、まず時代は何年も、いや、何カ月も経ってないわね・・・。」

テレビも前のお客のときと変わってないし。
まぁこっちのほうが高価そうだけど。
けっこう売れてる俳優さんなのかしら。

ぽちっとテーブルの上に置いてあったリモコンを操作するとCMが流れる。
見ていると前見たようなCMがいくつかあった気がした。
チャンネルを変えていくと再放送のドラマがあり、なんとはなしに見ていると、さきほど見送ったこの家の主が出てきて少し驚いた。



「ふーん。若いのに主役だ。他の番組にも番宣で出てたみたいだし。これは簡単に情報が手に入りそうね。・・・・・・よっし、本屋とコンビニに行って、いろいろ見てこよっと。」



ポケットから元鉄瓶を取り出して念じると、光とともに服が何枚かはらりと落ちてきた。



「ほんと、この機能って楽だわ。頭で思ったものが簡単に手に入るんだもの。」



そうして私は新しい服に着替えると、古い服はもう一度鉄瓶に吸収させてベランダに出た。
そして元鉄瓶を頭の上にかざして名前を言ってから瞳を閉じた。
身体の変化としてはただ熱が生まれるだけ。
体温が一時的に上がり、それが安定すると別の姿に変わっている。
今日は天気がいいから鳥にでもなれば怪しまれることもないだろう。
ま、なるべく普通の行動をしたいからマンションの近くにある公園までにするが。
そこから地下鉄やバスに乗ればなんとかなるはず。
そうして私は本屋やらコンビニやらに行って敦賀蓮という人物についていろいろと学んだ。










「おかえりなさい」



23時30分。
予定の時間より少し遅れて帰ってきた敦賀さんを玄関で出迎えると、敦賀さんは疲れているはずなのににっこりと私に笑いかけてくれた。
朝はなんというか無表情なときが多かったんだけど。
にこにこと話す敦賀さんに私もつられて笑いかける。

彼の笑顔に何故だかほっとした私は、彼に食事を勧めて、自分の任務を果たすために願い事が決まったかもう一度尋ねてみることにした。



「敦賀さん、願い事決まりましたか?」



「ははは、仕事中考えてみたけどね。なかなかないな・・・・・・。」



「そうですか・・・。」



「そうだ、もしよかったら君の昔話でも話してくれないかな?」



「昔話、ですか?・・・・・・でもそんなの願い事の1つになりませんからね。」



テーブルに食事を運んできた私は首を傾げる。
そんなこと、いままで聞かれたことがなかったので不思議な気持ちだった。
何か、胸のあたりがじんわり温かくなる。

あ、・・・・・・これ、なんだろう?

ぎゅっと無意識に手を胸の前で握った。
それを見たからか、敦賀さんが困ったような顔で先に言った。



「言いたくなかったらいいんだ。ただ、心配している人がいるんじゃないかと思ったから。」



「いえっ、あの言いたくないわけではなくてですね、その、いままでそういうこと言われたことなくて。びっくりしただけです。」



そうだ、いままで会ってきた客は一言も私についての話は出さなかった。
私のことは頭にのぼらなかったんだ。
願い事を叶えると言われて、しかもその制限数は決まっているとしたら、まずは自分のいましたいことを考える。
初めて会った人間の願いなど、生い立ちなど考える人の方が少ないんじゃないかしら。
いや、この目の前の人を除いたらいないんじゃないの?



願い?

いま、自分の願いを考えた?



私に願い事なんてあるのかな。
母に存在を拒否され、ひとりぼっちだった私。
心配する人間なんてこの世にいない。
一人も。
だから私は、この運命をいやだと思ったことがなかった。
誰かの願いを叶えて、感謝されるだけでも私は十分だから。



「最上さん?」



「・・・・・・あ、はいっ。すいません。過去と言っても特に面白い話はないのですが。それに幸せ、とは言いがたいものですし。」



「・・・・・・そう。・・・・・・だから君は、その運命を甘んじて受け入れたの?」



「え・・・・・・。」



「少なくとも、いま君が突然いなくなったら、俺は心配するから。」



何故だろうか、優しく笑う敦賀さんを見て、私は泣きそうになった。
鼻の奥が痛い。
本当に涙が出そう。



「あなたは・・・・・・優しいんですね。雑誌に紳士だって書いてありました。」



私がそう言うと、敦賀さんはほんとうは全然そんなんじゃないんだよ、と呟いた。
敦賀さんがどうしてそう言うのかわからない。
こんなに暖かく、こんなに優しい人なのに。


つづく

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