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kanon - 香音 - 3

kanon - 香音 - についてを一度読んでから読み始めてください。




kanon - 香音 - 3










神父さまにお留守番を頼まれた。
村の警察と村人が何かもめてるらしい。
昨日のようなこともあるし、ひどく不安になった。
今日は天気がいいけど、神父さまが心配だ。

お見送りに扉のところで神父さまをじっと見つめていると、神父さまは私の洋服も必要だね、と言ってなるべくすぐ帰ってくるから安心してと頭を優しく撫でてくれた。



神父さまは優しい…
お父さんの手はあんな風に大きいのかしら…



神父さまの背中がだんだん小さくなって見えなくなったところで、私は扉を閉めた。



どうして私は何にも憶えていないんだろう
昨夜の…あれは、本当に夢?

…きょーこ―――――
って言った。

あの人の手も大きくて…



昨日の夜のことが鮮明に思い出されて、私は目を瞑ってしゃがみこんでしまった。
何か、わけのわからない不安に苛まれる。
何かを、私は怖がってる?










夕闇が押し寄せて、木々も眠りに入りそうなころに神父さまは帰ってきた。
私の洋服も買ってきてくれたようで、せっかくだしすぐにそれに袖を通した。

「遅くなって申し訳なかったね。
こんな事件でもなければ村人たちと接することも殆どないんだけど…」

神父さまと私は夕飯を食べるためにテーブルを囲んでる。
今日もスープを作ってくれた。
でも私は、おいしそうなそれをどうしても美味しいと思って食べることができない。



のどを通るスープが…
まるで砂のようで



「あれ…どうしたの?
今日も食が進まない?

せっかく傷が良くなったんだから、体力をつけないと。」



でも…
神父さまもいつもスープ残してる



「君は成長期だし、もっと食べて大きくならないと。」



「……あ…」



成長…期―――――



「そうだよ。
大人になって…恋をして…

恋をしてステキな人とこの教会で式を挙げて?

もちろん、俺は特別に君の父親役も引き受けるから。

可愛い花嫁になるだろうな……あぁ
やっぱりそろそろ名前が必要だね。

どうする?」



な…まえ
あの人、きょーこって



「桜の季節に現れたから、“さくら”にする?

可愛くてぴったりだと思うけど。
桜、好きだろう?」



きょーこ



神父さま、あの人はきょーこって私の名前を呼んだ。



指でテーブルに名前だけ書いた私に、神父さまは驚いているようだった。
神父さまが名前を復唱する。
私はこくん、と一度だけ首を縦に振った。



「思い…出した…の?」



今度は横に振る。



「…夢…かな? 昨日の。


…そう…そうか。」



しゃべれない私の表情を見て神父さまは意味ありげな…困った顔をして笑ってくれた。
そうして、潜在意識なのかもねよかったよ、と今度はしっかり笑ってテーブルに置いてあった私の手をぎゅっと握ってくれる。



―――――ほんとうに?
夢に出てきた女の子は、私のこと…
ヴァンパイアだって言ったよ?



ほんとうに いいの?
全てを思い出したら 私は…



それから私は神父さまに上手く笑えないまま夕食を終えて、洗いものに取り掛かった。
神父さまは何か考えるように祈っていた。
そしてやっぱり神父さまは私と同じようにスープを残してしまっていた。



ドンドンドン



そのとき突然、切羽詰まったように響いたのは大きく叩かれたドアの音。
神父さまが急ぎ足で教会の外へと続く扉へ向かったのを見て、私も後に続いた。
村人に気づかれないように少し後ろの方で話を聞く。

村人はかなり焦っているようだ。
神父さまはいつも通りの対応をしている。



神父さまっ、ありゃあ吸血鬼ですよ

とうとう姿を見たやつがいるんですっ

人間の姿をしていて、こう

こうやって顔を隠すように布で

それから空を自由に飛んでて



そこまで聞いて、私は驚きと不安が入り混じった心から逃げるように後ろに後ずさった。
それから一気に自分の部屋に走って、ベッドの上でうずくまる。
私の頭にはあの人のことが浮かんだ。
あの、昨日の夜に現れた人。
あれはきっと夢じゃない。

あの人…私を連れ戻しに来たの?
―――――私が、ヴァンパイアだから?



「…きょーこ?」



突然、名前を呼ばれて一瞬あのときのあの人かと思い、震える肩を抱くようにして自分を抱きしめた。
そろりと部屋の扉を見ると、神父さまが立っている。



「あ…」

「また出掛けなくてはならなくなって…




いや 神父さま…
行かないで
嫌な予感がするの



すぐに戻るから、とまた私を安心させるために頭を撫でてくれた。
けれど不安でいっぱいの私の心は悲鳴をあげている。
神父さまにぎゅっと抱きついて、いってほしくないと伝えるが、神父さまは優しく大丈夫としか言わなかった。



「大丈夫、心配しないで。
ここに、アレは入ってこれないから」





















「足元…お気をつけて」



さっきから俺は、自分の喉の渇きに苛まれている。
教会に来た年配の男と共に吸血鬼が現れた場所へと向かうため、山の中の近道を歩いていた。
前を歩く年配の男の息上がってしまってはいるが、歩を止めようとはしなかった。


「はぁ…まったく何だってんでしょうな

この現代に吸血鬼とは…まぁ以前にも何かあったらしいけど


すいませんねぇ 神父さん
この裏山抜ける方が近道なんで」


喉が渇く。
だめだ、せっかくいままで何もなかったのに。
手が無意識に上がりそうになった。
前を歩く男めがけて…。


「ほら…もう家が見えてきました あの家です。
僕の兄の家で…」


手を男の肩にかけようとしたとき、彼の様子が変わった。
何かを見つけたようだ。
それを見て俺もやっと冷静になれた。


「ああ…あああああああ あれ あれ


兄さん!!!」


その悲痛な叫びは、一瞬にして消え去った。
目の前に現れたもう一人の男によって。





















ぱしゃん…



「人間界っていいねえ 飢えることがない
常に人間(えもの)がうろうろしてる」



女が木の上から池にいる短髪の男に話し掛けた。
二人とも少年少女のようだが異質な空気を放っていて、とても美しかった。
暗くなったこの世界は、彼らの元いた池にとても似ていたようで、傷が回復するのも早いことだろう。



ぱしゃん



「ま…何かうざいのもうろついてるけどねぇ
傷は…どう? 夜見(よみ)」



ばしゃん



「うん…もう痛くないけど…でも
やっぱり使えないや 唐木(うつぎ)」



女はくすくすと笑いながら池の中にいる男の話を黙って聞いている。



「この目は…もう役に立たないよ


くそ あのチビ どこにいるんだか見えない」



池の真ん中で立ち上がった夜見を沈めるように唐木は言う。



「居場所…見つけたよ
あの子の目いただきに行くかい?」



にやりとした唐木に、驚いたように見上げた夜見は続く唐木の話に思い出す。



「山の上の教会…」



「もしかして さっきの…神父…の?」



夜見は先ほど食事を終えたばかりだ。
古い日本家屋にいた年配の男から血を奪い、近くにいた違う男からも頂戴した。
そのとき、2人目の横にいたのは神父だった。
血をもらうところを見られたが、別に困ることはない。
だから目があった時、夜見はにっこりと笑いかけてやった。



「神父…って何か独特だったね


何か…村のやつらと比べてちょっと異質っていうか」



「何言ってる われら“シ”が言うことじゃない



あのお姫さん、何故だか記憶を失っててねえ…
おかげで人間演ってたってわけ
ふふふ 最上の気配がないはずだ
おかげで
あの時あちらもかなり深手を追っていたはずだったのに
とどめがさせなかった」



ぱしゃん



「どうやって見つけたの?」



くすくす



ふわりと唐木が木から降りてきて、夜見がいる近くまで移動した。



「マヌケなナイトくんのおかげv」



彼が目印になったのさ。




つづく
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