スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

きいろいしっぽ2




暗い闇の中、ゆっくりと頭上に光がさした。



せめて、次に選ばれた人が普通の人間であれば、私はもう前回のことを忘れる、と思いつつ瞳を閉じた。










光に導かれて、次に視界に入った世界には前回からあまり時間が経ってないようなものが置かれている大きな部屋だった。

ちらりと周りを観察してから、目の前で茫然としている男性にまずは挨拶をすることにする。



「はじめまして。次のお客さまですね。」



一応お辞儀をしてみる。
しかし驚いた顔のまま固まっている彼に、少し首をかしげて聞いた。



「えぇっと、日本語通じないんですか? ここ。」



「い、いや、ここは日本で、日本語は使うけど」



やっと返ってきた返答に少し安心しながら、私は既に何度も言い放ってきたセリフを口にしないとナァと頭の隅で考えた。



「そうですか。・・・・・・あ、驚かせてすみません。私の名前は最上キョーコです。」



名前だけでも言っておけばまずは相手を安心させられるだろうと、きょろきょろとあたりを見回して私が出てくる発端となった物を探す。
いまだ驚いている彼の足元に赤い鉄瓶が転がっていた。



今度は鉄瓶か・・・・・・もっとましなものに入れて欲しいわ。



ひょいと鉄瓶を取って、自分の名前を唱えると鉄瓶が小さく変化し、平たい円盤のような形になる。
それをポケットに入れると、彼に向き直った。



「あなたの願いを3つ叶えます。まずは一つ目をお願いします。」










「・・・・・・・・・・・・えと、最上さん。だっけ?」



「はい、」



最初に名前を呼ばれたのは初めてだったと思う。
いままでの選ばれた人間はみんな驚いて叫んでみたり、すぐさま願いを言い放ったりしていた。
彼も驚いていたが私も驚かないではいられなかった。



「その、あまり状況が飲み込めないんだが」




たしかに。
いきなり鉄瓶の蓋を開けたら見知らぬ少女が出てきて、唐突に願いを3つ言えなどとは、お伽話の中だけである。
それが現実に起こっているとなると、頭をかかえたくなるのはもっともだ。



「では、まずは説明します。あ、これは3つのお願いにはいれませんからご安心ください。」



そして淡々と説明することになった。

先ほども名乗ったが、私の名前は最上キョーコ。
元は人間であるが、今はよくわからない。
ある子猫が車にひかれそうになっているのを助けたとき、母猫にこう言われた。

『ありがとうございます、キョーコさん。お礼といってはなんですが、あなたは今、大事なものをなくしてしまっていますね? それを取り戻す機会をさしあげましょう。』

そうして、次の瞬間にはこの運命をたどることとなっていた。

人の願いを3つ叶える仕事。

たいてい、物に宿ってお客さまを待つ。
そして選ばれたお客さまの元に呼び出され、願いを叶える。
叶え終わったらまた私は次のお客さまを待つため、別の物に宿る。
母猫が言っていた無くしてしまった大事なものすら自分ではわからずに、既に何人もの人間の願いを叶えてきた。

前回のあの男はこれまでのお客の中で最低最悪だったけど。



「・・・と、いうわけです。じゃぁ、願い事をどうぞ?」



話し終えた私は、すぐさま自分の任務を遂行すべく、彼に同じ質問をした。
すると、彼は困ったように笑って



「ごめん。無い、かな。」



「・・・なんでもいいんですよ。お金をくれでも、世界一良い女をくれでも、あー・・・・・・試験に合格させてくれでも。」



「そんなお願いをいままでの人は君にしたの?」



私の話を聞いていた彼は真剣な面持ちで尋ねてきた。
考えてみるとそう言うものばかりだった。
宝くじの1等を当ててくれと言った人もいるし、時間を10年戻してくれと言った人もいる。
幸い人を殺してくれとか、私に対してのお願いごとはなかったが。
さっき口に出した例は前回の人間のものだったし。



「はい、そうですね。あの、本当に無いんですか?」



それならば、あまりに無欲すぎじゃないだろうか?
確かに彼の部屋を観察した時点でそんなにお金に困ってる風には見えないし、顔や体形だって悪くないと思う。
それでも何かしら人には欲と言うものがあるわけで、無いと言うなら出家した坊さんとでも言えるような。



「あの、困るんです。願い事をきかないと次のお客のとこにも行けないですし。」



そんなこと言われても、と彼も困った顔をした。
そして思いついたようにあ、と小さく呟いて口にした言葉、いや彼のお願いとやらに驚いた。



「あ、じゃぁ軽い夕食でもお願いしていいかな?」



「え・・・・・・」



「お願いその1として。」



「・・・・・・あの、私があなたのお願いを聞き終えるまでは一応家に置いてもらうということになるので、お返しに家事全般はするルールというかなんというか・・・すみません。」



こんなことで謝ることになるとは思っていなかった。
お願いがそんなことを言われるとは、いままでに前例が無い。



「そうなんだ・・・。」



今回のお客は随分いままでとは勝手が違うようで、私は困り果ててうつむいてしまった。



つづく

スポンサーサイト

comment

管理者にだけ表示を許可する

04 | 2017/05 | 06
Su Mo Tu We Th Fr Sa
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
最新記事
カテゴリ
リンク
FC2カウンター
月別アーカイブ
最新コメント
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。