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トモシビ4

最上さんの様子がおかしい。
そう思い始めたのはいつからだったか。
そうだ、ロケで北海道まで行った頃からじゃないか?



トモシビ 4



大自然の中でのロケも無事終わりを告げて、それから既に1週間は経とうとしている。
最上さんとは役の位置関係から撮影が一緒になることは少なくなってきていたが、何度か事務所では会うことができていた。
顔を合わすといつもどおり姿勢良くお辞儀と挨拶から始まって、仕事の話とたわいもない話を少しだけして、頑張ってくださいと言われて別れる・・・そんな決まったパターンでも俺にとっては十分すぎるほどだったのだけど。

最上さんの様子、というか表情が少し変わったのに気がついた。
普段はにこにこして話をしているが、ときおり何か思い出すように悲しそうにする。
悲しそうといえば語弊があるかもしれないな。
顔は笑っているが、それが少し陰るのだ。

何かに悩んでいるのかもしれない。
演技についてかもしれないし、もしかして俺に話さないってことはプライベートなことかもしれない。
いくら考えても無駄なことはわかってはいるが、ついつい彼女の顔を思い出してしまっては考える、ということが少し増えたかもしれなかった。


そして電話が鳴り響いた。


またもや彼女のことを考えて、時間が過ぎていることにようやく気づいた。
現在日付が変わって1時。
ソファにもたれかかって、ぼんやりとしていたところで彼女の顔が頭を過ったから。

鳴りそうもない時間帯なので、一瞬電話の相手は先ほど送り届けたマネージャーか、と考え急いで携帯を取り出した。
しかし予想とは違う人物の名前が携帯の画面に映し出されていて、少し戸惑った。
画面の端に表示されている時刻をもう一度見て、ボタンを押す。

「もしもし?」

『……敦賀さん、夜分遅くに申し訳ありません。』

「いや、いま帰ってきたところだからいいけど…どうした?」

彼女にしては珍しく挨拶なしで始まった会話に新鮮さを感じながら、耳に響く彼女の声を注意深く拾った。
ここずっと考えてきたことを昇華させる為にも。

『ご迷惑なのは重々承知しておりますが、今から話したいことがあるんです。会っていただけませんか?』

やはり彼女は何か相談したかったのだ。
何か悩んだり、苦しかったりしたのだ。

俺はすぐさま助けたかったが、いかんせん時刻は出歩くべき時間では無い。
彼女のことだから絶対迎えに行くといってもタクシーで来たりするだろうし。

「いいよ、けど時間が時間だし夜道は危ないから…。」

『…実は用事で近くまで来てるので、』

近くに仕事をするような所があっただろうか?
それにこんな時間に?

言いずらそうに彼女は口篭ったが、しっかり電波に乗って届いたその言葉を聞いて少し焦った。
そして迎えに行くと言うと、彼女がやんわり断った。
もちろん、あと2分ぐらいなんですという理由もつけて。










「急にどうしたの?」

彼女は少し肩が濡れていた。
俺が帰って来たとき雨は降っていなかったが、現在はけっこう強く降っているらしい。
彼女を迎え入れると、すぐにコーヒーをいれてタオルも渡した。

「……驚くかもしれません、いえ絶対驚きます。」

ソファにそれぞれ座って、コーヒーを一口飲んだところで彼女は重く一言一言吐き出した。

何に驚く?

「最上さんに驚かされるのは珍しくないから大丈夫だよ。」

からかうように言うと、そうですねとふんわり彼女は笑った。
それからまた真剣な顔つきになって、ごくりと唾を飲み込んだがわかった。

窓に雨が叩きつけられている。
彼女が玄関に来たときよりもひどくなってるらしい。




「私、敦賀さんのこと好きです。」




すぐに、部屋に響いた声に頭がついていけてないのを感じた。

だって彼女はいま何て言った?
いや、都合良く考えてはいけないな・・・。
それは先輩として好き、ということなのだから。
俺の気持ちとは違う。

そこまで考えたところで、俺はやっと口を開けることができた。

「俺も最上さんのこと好きだよ? 突然どうしたの?」

けれど無情にも彼女はまた爆弾を落とすのだ。

「違います、」

「何が?」

「そういう意味じゃありません。」

じゃぁどういう意味なんだ。
そんなこと言われたら都合良く受け取ってしまうよ?
君は、愛することも愛されることも拒否してるくせに。

「敦賀さんのことが好きなんです。」

「……どういう意味で?」

「異性として。」

もしかしてどっきりなんじゃないだろうかと考え始めるのにそう時間はかからなかった。
原因は社長か?
社さんか?
それとも最上さん、何か役が入り込んでいる?

「突然すみません。でもせっかくのラブミー部卒業の一歩になるこの気持ちを言葉にしなきゃいけない、と思いまして。」

声が出ない。
彼女は照れるでもなく、泣くこともなく、にっこりと笑って話している。
何かを得て成長した、というか。
どっしりと軸のようなものができあがり、何があってもぶれない気がした。

「なので、敦賀さんにはぜひおめでとうって、言って欲しいなと。断られるのはわかってますから。」

断る?
どうして断るんだ?
俺が好きなのは、君なのに。

「ほ、んと、に?」

「はい。愛の気持ちまで敦賀さんから教えてもらうなんてびっくりですね。」

彼女は、自然に湧き上がったんでした、と言ってけたけた笑っている。
俺は、いつのまにか大きく響いていた鼓動に少し驚きながら、ゆっくり、間違えないように言うしかなかった。

「最上さん。」

「はい。」

「俺も好き。」

「はい、………………はい?」









「ななななっ何言ってるんですか?! 敦賀さんっ気をしっかり持ってくださいっ!」

俺が真剣に返事をしたにもかかわらず、彼女はいつもの彼女にいつのまにか戻っていた。
わたわたと慌てて、手をばたばた振って、何故だかわからないが俺を心配している。

「好きだよ、ずっと前からね。」

「ああっ、もしかしてラブミー部をやっと卒業しそうだからってからかってるんですか?!」

「違うよ、信じて。」

信じて。
そう言った俺に、困った顔で最上さんはおとなしくなって手のひらをきゅっと握った。
そして何か言おうとしているが、口を開いては閉じ、吐息が出るだけで、音にはならなかった。


けど何十秒も待ったとき、彼女は言ったのだ。




「雨に濡れてきっと外臭いんですけど、……










抱きついてもいいですか?」




俺のおいで、と言った言葉とともに突進してきた彼女を抱きしめたのは、その5秒後。





おわり


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