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トモシビ2

熱いな。
胸の奥が。
こんなにも熱いなんて。



トモシビ 2



敦賀さんとの夜の散歩をした次の日、朝から滞りなく進んでいく撮影に、私は心乱すこともなくしっかりと演技をして、他の俳優さんたちについていけているようだった。
冷静に自分をそう見つめたのは、スタッフから渡された日傘を差しながら次の出番を待っていたときだったけど。

少し先には、あの人がいる。
真剣な表情で役を演じきってる姿は、何度見ても尊敬してます、の一言だった。
いままでは。



『ーーーここにある世界がーーー』



ふとうつむくと、敦賀さんの台詞が耳に届いた。
足元の土がキラキラしてる。
太陽の日差しが強いせいかなと思って顔をあげると、やっぱり昨日とかわらずどこまでも青い空があった。

ここにある、そうだ青空が一度に消えてしまうとしたら、私は何がしたいだろう?

そんな疑問がふと頭に過り、周りの音が一切聞こえなくなった。
青い空と、私だけ。
頬の濡れた感触がして、自分は涙を流している、と気づいた。
たった一筋の涙だったけど、スタッフにも気づかれないような涙だったけど、心の奥に隠れていた私は囁いた。
そして、答えが出た。



ひとつだけ残せるなら愛をかたちにしてみたい



そう思ったとき、目の前にいたのは自分だった。
少し前の、愛することを知っている自分。
彼女は光の束を抱えていて、パスタの茹でる前の状態のそれを一本とって、ふわりと指で撫でた。
そして言ったのだ。




せっかくそだったソレ、捨てないで




これは、恋だよ




次に気づいたときには、撮影現場に戻っていた。

彼女が持っていた光の束に、手をのばそうとしていたらしく、近くにいた共演者やスタッフに気づかれないようにして、手を素早くおろした。
それから目にごみが入ったふりをして涙を拭った。
彼女は知っている。
私がその想いを無意識に捨てようと、消そうとしていたことを。
つかみきれないものに手を伸ばそうとした今、私は悔しくもそれを受け入れなければならなかった。

けれどよく考えなきゃいけない。
その想いのせいで、私はひどいダメージを受けたのだから。
2回目だからといって慣れるわけもないし、はっきり言ってまたそうなるのは嫌だった。

やっぱりこの想いは捨てなければだめだ。
敦賀さんに手を伸ばすなんて、

「最上さん?」

「は、はいっ」

勢いよく顔をあげると、そこには不思議そうな顔をした敦賀さんが私を覗きこんでいた。
いつ敦賀さんの撮影が終わったのか、私としたことがまったく気づかなかった。

「またメルヘンの住人になってた? スタッフが呼んでるよ。」

「えぇっ、あああすみませんっっありがとうございます。」

と素早く敦賀さんにお礼を言って、ダッシュで先ほどから呼んでいたようだったスタッフの元に、走った。
一瞬、顔が緩んで笑顔になってしまった自分の頬をさすりながら。


夏だからって、こんなにも熱いなんて。




つづく


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