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トモシビ1

私の心とあなたとの距離が離れてしまっても、大丈夫。
迎えに行ってあげるから。
それに、今まで見ようとしなかった外の世界はきっと喜んであなたを迎えてくれるわ。



トモシビ 1



久しぶりの敦賀さんとの映画の共演の話に喜んだのは数カ月前だっただろうか。
自然の中での撮影を目的に、北海道までロケに来た私たちは、どこまで行っても青い空と緑の山々に感嘆の溜息ばかりだった。
京都のあの緑とは少しだけ違う空気に癒されながら、宿泊用のコテージの目の前に広がる、端の見えない牧草地にはしゃいだのはついさっきだった。
それもそのはず。
挨拶にきましたと言わんばかりに遠くからコテージ側の柵までやってきたのは二頭の馬だったから。まだ子供のようにはしゃぐ、子馬とは言えない大きさの少し育った茶色の馬と母馬。
恐る恐る鼻の頭を撫でたときの感動は今まで味わったことがないくらいのものだった。

それから早い夕食をスタッフや共演者の方たちと食べて、次の日から始まる撮影に向けて早めの解散になった。
一人コテージに戻り同室の女優さんが近くの温泉街に行くのを見送ってから、私は次に現れたお客と共に夕方の散歩に出かけることになったのだ。

コテージにやってきたのは敦賀さんで、玄関で顔を見たとき同室の女優さんがいなくてよかったなどと考えてしまった。
その女優さんは敦賀さんのことをかなり気に入ってるらしかったから。

そんなこんなで二人で散歩に来ている。
敦賀さんの片手には大きめの懐中電灯と地図らしき紙。
まだまわりは夕焼けの光で明るかったが、すぐに真っ暗になるので、懐中電灯を持っていないと足元も見えなくなるとコテージの管理人が言っていた。
舗装されていない土と砂利の道を進みながら、小川が流れている場所にたどり着いて、二人で夕焼けを見る。

「本当に同じ夕日とは思えないくらいですね。」

じんわりと山に隠れて溶けるようになくなっていく夕日に、ポケットに入れておいたデジカメの存在を思い出し、急いでレンズを向けた。
何度かシャッターを切り、金星も指しながら敦賀さんの方を振り返る。
敦賀さんは何故か私の様子を見ていたようで、微笑んでいた。



その時、確かに胸の中に今までに無い熱い何かがこみあげた。



「うん、東京じゃ考えられないぐらい綺麗だね。」

敦賀さんは目の前に広がる夕焼けを見て、私にそう言った。
振り向いたとき目に映った敦賀さんの笑顔に、自分の胸に灯ったものに違和感を感じたが話を続行することで、深く考えないようにした。

「あ……、星がもう出てますね。」

敦賀さんの後ろに広がる褐色の空にわずかだが星が散らばってることに気がついた。
東京では考えられない空の様子に思わず口が開いたままになってしまう。

「そんなに口開けてたら虫入るよ?」

くすくすと笑う敦賀さんの方をもう一度見て、少しスネ気味に口を結んだ。
それから、ほんの数分だったか何十分も経っていたのかわからないけど、真っ黒な布団を被ってしまった空に先ほど夕焼けを見た以上にはしゃいでしまうことになる。

真っ黒な、とは言い難い空にまたもや口は開きっぱなしになっている。
視界に埋め尽くされた星屑が、都会のビルの光よりもはっきりと私と敦賀さんを照らしていたから。

「電気もないのに少しだけだけど敦賀さんの顔が見えます。」

「うん、すごい数だ、本当はこんなに星ってあるんだよね。」

本当に少しだけど敦賀さんの顔が見える。
笑ってるかどうか、くらいはなんとかわかるようなわからないような。
そうして頬が熱くなるのを抑えながら、じっと星が輝くのを見守っていると、あっ、と思わず声が出た。

「敦賀さんっいま見ました?!」

「見た。けど実はさっきから何回も見てる。」

「えぇっっ。」

輝く星の中に数秒の時間をあけて何度も何度も星が流れる。
あっちにも。
こっちにも。
1回目はもう見れないかも、と思ったけど大感謝セールの幕をさげて、もう既に5回それは流れている気がした。

「こんなに流れてたらいっぱい願い事かなっちゃいそうですよね。敦賀さんは何か願い事しました?」

「ないしょ。」

「あ、もしかして明日の私の撮影失敗しませんようにとかじゃないですか。」

「あ、なんでわかった?」

「意地悪そうな顔してましたから。」

ふふ、と笑った敦賀さんにわかるようにぷいっと顔を背けると、誠意の感じられないごめんの一言が呟かれた。
そんな会話の最中も星は流れ続けて、私にはもう何度目の流れ星なのかわからなかった。

「そろそろ戻ろうか。」

じゃりと靴の下で石が悲鳴をあげたのと、敦賀さんの方を見て、胸がまた熱くなったのはどちらが先か。
そのとき暗い、星たちの微かな光の中で、はっきりと私の心に熱が生まれたのだ。

敦賀さんの笑顔が。
敦賀さんの言葉が。
敦賀さんの視線が。
敦賀さんの。
敦賀さんの。

ストンと胸の奥に落ちてきたのは、敦賀さんに対しての想い。

(あぁ、わたし敦賀さんを好きになってる)

危なく呟きそうになった言葉を飲み込んで、薄く色づいているだろう頬に気づかれないように、帰り道を歩く敦賀さんの隣をなるべくゆっくり歩いた。



つづく



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